「京都モダン建築祭」実現のための支援

理事の笠原一人からのお知らせです。

-京都で大切に守られてきたモダン建築が、年に一度、一斉に扉を開く-

京都で大切に守られてきたモダン建築が、年に一度、一斉に扉を開く。新たな建築祭を立ち上げるプロジェクトです。京都の建物や営みが“生きた文化財”として受け継がれ、時代に相応しい形で共に未来へ進んでゆけるよう、ご支援ください。クラウドファンディングのサイトはこちら

■このプロジェクトについて
京都で大切に守られてきたモダン建築が、年に一度、一斉に扉を開く。新たな建築祭を立ち上げるプロジェクトです。京都の建物や営みが“生きた文化財”として受け継がれ、時代に相応しい形で共に未来へ進んでゆけるよう、ご支援ください。

■「京都モダン建築祭」の開催をめざして
私たちが生きてきた街を形づくり、その記憶を姿かたちで雄弁に語るのが、近現代に建てられたモダン建築です。そして京都は、近代以降震災や戦災の被害が少なかったこともあり、街中にモダン建築が高密度に現存する、他に類を見ない大都市です。

2021年秋に京都市京セラ美術館で開催された展覧会「モダン建築の京都」は、資料展示にとどまらない横断的な連携によって、京都のモダン建築に実際に触れる豊かな体験の機会となりました。京都のモダン建築に注目が集まっている今、この気運をまち全体に広げ、それらの文化的価値を高め、活かしていきたいと考えています。

建築史に衝撃を与えたあの傑作から、憧れの洋館、時代の空気を色濃く残す街場のカフェまで。京都という街の魅力を様々に物語る「モダン建築」が、年に一度、一斉に扉を開く……。そんな「祭」を開催し、新たな京都の風物詩として育てていきたいと思っています。

一人ひとりに支えられた、新たなイベントの形

かつてなかった建築祭実現のために資金をどう捻出するかは、このプロジェクト最大の課題です。現状、助成金や公的資金、企業協賛などの予定は全くなく、有志で資金を持ち寄り、なんとか運営費を工面しています。

公的資金に頼らず持続していくため、モダン建築が好きな皆さん一人ひとりに支えられた、新たなイベントの形がつくれないだろうか。必要な総予算は、イベント設営費、広報物の制作費、スタッフ人件費など、約1,400万円。今回の支援は、その一部に充てさせていただきます。

建築所有者の方をはじめ、研究者や大学等教育機関、自治体や観光協会。そして何より、このクラウドファンディングで応援してくださるあなたが、この建築祭を一緒につくりあげていく一人です。さまざまな皆さんの情熱によってこそ形になってゆく夢のプロジェクト。皆さまからのご支援を、心よりお願い申し上げます。

■私たちのこと
私たち京都モダン建築祭実行委員会は、「京都でモダン建築の一斉公開イベントを実現したい」という志をもつ、個人や団体による私的な集まりから生まれました。

「モダン建築の京都」展の企画者である京都市京セラ美術館のディレクター。その展覧会アドバイザーであり、長年京都で近現代建築の研究や保存再生に携わってきた建築史家。同じく同展アドバイザーであり、日本最大級の建築公開イベント「イケフェス大阪」を立ち上げ支えてきた建築史家。さらには、京都の文化財保護を率いるエキスパート。観光の質を高め、持続可能な国際文化観光都市を目指すスペシャリスト。京都のまち歩き文化を牽引してきた仕掛け人。

異なる分野で活躍してきた多彩なメンバーが、それぞれの強みを掛け合わせ、かつてなかった「建築祭」をつくりたいと、力を尽くして企画を進めています。

■実行委員会の顔ぶれ
笠原一人(京都工芸繊維大学助教)
倉方俊輔(大阪公立大学教授)
濱崎麻智(京都市観光協会 担当部長)
前田尚武(京都市京セラ美術館 企画推進ディレクター)
山口壮八(京都市文化市民局文化芸術都市推進室 文化財担当部長)
以倉敬之(まいまい京都 代表)
恵良陽一(京都市産業観光局観光MICE推進室 観光誘客誘致課長)
高田光治(京都ユースホステル協会 専務理事)
事務局 まいまい京都

■「京都モダン建築祭」がやりたいこと
2022年11月11日(金)〜13日(日)、週末の3日間、京都に現存するモダン建築を一斉公開。初年度の目標は30件。年一回恒例の建築イベントとして、多様な人と建物をつなぎ、京都の新たな魅力を体験できる機会を創出します。

また、モダン建築の楽しみ方を最大化するために、専門家がその見方を熱く語るオーディオガイドや、所有者や専門家等によるスペシャルツアーも実施。各分野のスペシャリストと建築ファンをつなぐオンラインサロン「あつまれモダン建築部」が、2022年2月から始動しています。

■特典について

●シンプル応援
ご支援を、できるだけ多く建築祭の運営費に使用させていただくコースです。

●京都モダン建築祭2022招待状
建築祭の公開建築に入場いただける共通パスポートをお送りします。ただし、事前予約が必要な施設、スペシャルツアーでのみ見学できる施設には使用できません。

●建築祭オリジナルグッズ
京都モダン建築祭のオリジナルグッズとして、Tシャツ、エコバッグ、バッジをお届けします。

●モダン建築グッズ応援福袋
公開施設等ご提供の品々を加えた建築グッズセットです。なかには貴重な非売品も。何が入っているかはお楽しみにしてください。

●まいまい京都「奈良監獄・貸切スペシャルツアー」ご招待
再整備直前の「旧奈良監獄」をまいまい京都が終日借り切り、スペシャルツアーを実施します。コースは2種類あり、ひとつが、産業遺産探検家 前畑洋平さんがガイドするツアー。もうひとつが、建築史家でモダン建築祭実行委員長の笠原一人先生がガイドするツアー。リターンごとに日時・ガイド固定となっております。後から日時変更はできないのでご注意ください。

実施日 2022年9月10日(土)
前畑さんコース ①9:30〜 ②12:30〜 ③15:00〜(所要約1.5時間、各20名)
笠原先生コース ①11:00〜 ②14:00〜(所要約1.5時間、各20名)
※当日の詳細はあらためてメールでご連絡します。

●まいまい京都えこひいき券
建築祭事務局である「まいまい京都」のツアーにおいて、申込多数で抽選になった際、この券を使うと確実に当選できます。1年間有効。1枚につき1人1回使用できます。なお、今回の建築祭主催ツアーには使えません。

●先生厳選サイン入り建築本セット
京都モダン建築祭実行委員会の笠原一人先生、倉方俊輔先生、前田尚武さんが厳選した、おすすめ建築本を3冊セットでお届けします。それぞれに選者のサインが入ります。

●先生独り占めオーダーツアー
笠原一人先生、倉方俊輔先生、前田尚武さん、以倉敬之のうちいずれか1名を貸し切り、ご相談のうえ、完全オーダーメイドでガイドツアーを実施します。ツアーは半日、できるだけご要望にお応えできるよう努めますが、非公開建築については先方次第となり、あくまで「ご相談のうえ、可能なコースで」となります。日程は、ご希望の先生と双方調整のうえ決定します。2023年3月末日までの実施を予定しています。

●建築祭打ち上げご招待
京都モダン建築祭2022実施後に開催予定の、関係者打ち上げにご招待いたします。開催時期は11月下旬または12月、会場は京都市内を予定しています。感染症拡大防止に配慮し、各種ガイドラインに基づいて実施します。

●囲む会
建築祭を支えてくださった感謝を込めて、実行委員有志と事務局メンバーが囲む懇親会にご招待します。日程はご相談のうえ調整。感染症拡大防止に配慮し、各種ガイドラインに基づいて実施します。

●建築祭全プログラム優先参加権
京都モダン建築祭2022全主催プログラムに優先的にご参加いただけます。詳細は未定、鋭意企画中です。実行委員会が主催するプログラムのうち、事前予約や抽選が必要な限定公開、スペシャルツアー等すべてが対象です。

想定されるリスクとチャレンジ

リターンの一部は、「京都モダン建築祭」の実現を前提としています。目標金額に達しなかった場合でも、私たちは自己資金を持ち出し、建築祭を開催する覚悟をもっています。リターンもお届けします。何もかもが初めての取り組みであり、未知な部分も多々あります。それでも「京都モダン建築祭」は必ずやり遂げます。皆さんの情熱を、私たちに貸してください。

最後に
さまざまな建築を訪ねるほどに深く心に刻まれてゆくのが、「守ってきた人がいる」ということです。京都には多くの魅力的なモダン建築が現存しています。戦争や震災の被害が少なかったことはもちろんあります。でも、それだけで建築は残りません。受け継ぎ、守り、愛を注いできた一人ひとりの意志と努力がなければ、今ここにある建築と出会うことはできませんでした。ここまで受け継がれてきた建築が、今を生きて私たちの暮らしや文化を豊かにしてくれているという奇跡。この営みが続くことを願ってやみません。そして、その一助となれる「京都モダン建築祭」をつくっていきたいと、強く願っています。

■メッセージ

◎笠原一人 京都モダン建築祭実行委員長
京都は、近世以前に建てられた数多くの神社仏閣や約4万件もの町家が現存する街として、世界的に知られています。しかしながらその京都が、明治期以降に造られた比較的新しい「モダン建築」の宝庫でもあり、その「モダン建築」が京都の風景の一部を形づくっていることについては、まだ十分に認識されていないように思われます。

西洋の技術をいち早く導入した琵琶湖疏水や発電所。西洋文化の象徴である国立博物館や三条通の洋風建築群。学術の先端である同志社や京都大学など高等教育機関の校舎群。そして、東山の琵琶湖疏水を活用した豊かな庭園を擁する数寄屋造りの別邸群。いずれも明治以降の近代化によって生み出された、京都ならではの豊かな建築遺産です。

「京都モダン建築祭」は、こうした近代以降の建築遺産に光を当て、その歴史や魅力を多くの方々に、そしてより深く知っていただくためのイベントです。京都の「モダン建築」がいかに豊かで個性的で、同時に時代を超えた普遍的なものであるか。それを知るには、何よりも実際の建物を訪問し、体験することから始まると考えています。その体験の積み重ねにより、「モダン建築」もまた、今後長く受け継がれる新しい京都の伝統となっていくことでしょう。

建物を所有・管理する皆さんや、それを支える地域の皆さん、行政の方々、イベントに参加される皆さんとともに、モダンな京都の魅力を育んでいきたいと思います。

「京都モダン建築祭」の実現に向けて、ぜひご協力をお願いいたします。

笠原一人(かさはら・かずと)
建築史家。京都工芸繊維大学助教。専攻は近代建築史、建築保存再生論。住宅遺産トラスト関西理事。DOCOMOMO Japan理事。著書に『ダッチ・リノベーション』『村野藤吾のリノベーション』『建築家 浦辺鎮太郎の仕事』『建築と都市の保存再生デザイン』『村野藤吾の建築』『関西のモダニズム建築』ほか。京都モダン建築祭実行委員長。

◎倉方俊輔 京都モダン建築祭実行委員
京都で見るべきは、モダン建築です。
幕末に西洋建築の情報が日本に入ってきてからの優れた建物が、この街には数多くあるのです。
それはなぜでしょうか?
空襲を本格的には受けなかったから。
明治以後、いっそう文化的な日本の中心地として理解された京都には、日本を代表する建築家たちが作品を残したから。
伝統建築を大事にする人たちは、モダンなものもまた大事にして、建物が受け継がれているから。
優れた伝統があるからこそ、それに設計者が向き合い、良い蓄積を取り入れたり、あるいはそれに勝るモダンさを打ち立てようとしたから。
京都大学、京都工芸繊維大学、京都市立芸術大学など、近代の建築やデザインを代表する学問の都だから。
いずれが正しいのか、もしくは、さらに理由があるのか?
実際、豊富に残っているモダン建築を知って、巡って、考えてみませんか。
京都に住むべき理由、訪れるべき訳も、さらに腑に落ちるはず。
このプロジェクトが、日本で初めての試みとなります。
最初の同伴者になっていただけたら、とても心強いです。

倉方俊輔(くらかた・しゅんすけ)
建築史家。大阪公立大学教授。日本近現代の建築史の研究と並行して、建築の価値を社会に広く伝える活動を行っている。著書に『京都 近現代建築ものがたり』、『神戸・大阪・京都レトロ建築さんぽ』ほか多数。メディア出演に「新 美の巨人たち」「マツコの知らない世界」など。日本最大の建築公開イベント「イケフェス大阪」、東京都品川区の「オープンしなけん」などの建築公開イベントに立ち上げから参画。京都モダン建築祭実行委員。

◎前田尚武 京都モダン建築祭実行委員
これまで私は、美術館で広く一般の市民に建築の魅力を伝え、建築ファンを増やしてゆくことを目指し、いくつかの建築展を企画してきました。来館者の感想として、展示を観て実物を訪ねたくなった、現場では知り得ないことが理解できたといった声を多く頂いてきました。昨年、京都市京セラ美術館で開催した開館一周年記念展「モダン建築の京都」(2021年9月25日〜12月26日)は、そんな声に応えようと着想した展覧会です。美術館そのものが都市のコアとなり、展覧会がコミュニティのプラットフォームになるようなキュレーションを実現し、展覧会と都市をつなぐさまざまな取り組みを通して、従来の閉じた展覧会から脱し、美術館の展示をコアに、京都市域を展示室に見立てた開かれた展覧会を試みました。

神社仏閣庭園だけではない京都における文化観光の新たな方向性を提示し、地域経済の活性化、社会課題の解決にもつながる可能性を追求した展覧会でした。

これらの取り組みは、企業・機関との連携を軸に展開し、街歩き音声ガイドアプリ開発、建物特別公開、建物探訪ツアー、レストランやカフェの特別メニュー、オンライン・コミュニティサロン、展覧会連携など、約25の旅行会社、飲食店、ホテル、観光関連団体、博物館・美術館などと連携し、これまでの展覧会にはない拡がりをみせました。この機に試みられた企画やサービスは閉幕後も継続しているものもあり、京都における新しい文化観光のコンテンツとして歩み始めています。なかでも開幕前から閉幕1ヶ月後まで約5ヶ月間実施した展覧会オフィシャル・オンラインサロンは、会員数が350人を超え、建築史家の倉方俊輔氏(大阪公立大学教授)と笠原一人氏(京都工芸繊維大学助教)と私の三人交替で二週間に一回オンライン・レクチャーを行いモデレーターの以倉敬之氏(まいまい京都代表)を交え、チャットで参加者と対話する企画です。通算10回のライブ配信のレクチャーとともに14回のリアルツアーを実施し、ハイブリッドなコミュニティの実践となりました。このコミュニティは、展覧会閉幕後に「あつまれモダン建築部」と名を改め、テーマも拡げて継続しており、この部活を核に、自治体や諸機関と共に進めている企画が「京都モダン建築祭」です。

建築最大の魅力は、個々の建築が向き合っている建築文化にあります。建築主や建築家、施工者といった創り手たちの着想・技術・思想、建物の使い手が紡いできた物語や時代背景、作品同士の時間と空間を超えたつながり、社会課題に取り組む姿勢や都市への眼差しといった建築文化の奥深さを鑑賞者と共有し、学び合うことこそが建築文化を楽しむ秘訣です。是非、この機会に京都の知られざる魅力に触れていただききたいと思います。

前田尚武(まえだ・なおたけ)
一級建築士/学芸員。京都市京セラ美術館企画推進ディレクター。1994年、早稲田大学大学院修了。2003年から森美術館に在籍し「建築の日本展」(2018年)、「メタボリズムの未来都市展」(2011年)などの建築展を企画。2019年より現職、「モダン建築の京都展」(2021年)を手掛けた。森美術館における一連の建築展企画で、2019年度日本建築学会文化賞受賞。京都モダン建築祭実行委員。

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