衣笠山の家(小林家住宅)

鉄筋コンクリート造2階建て、柱・梁はコンクリート打ち放しで、東西の壁面にはタイルが貼られる。南面のピロティが印象的な建物で、外観はル・コルビュジエのサヴォア邸を思わせるが、窓には木製の格子が取り付けられ、室内には襖、障子、長押が用いられるなど、随所に日本的な意匠をみることができる。西洋のモダニズム建築の造形に日本の伝統的要素を融合させた、いわゆる「日本的モダン」の趣をもつ。
居室空間は眺望を楽むため、2階に持ち上げられている。動線は来客用とプライベート用に分けられ、南側は社会的空間として、北側を私的空間として配置される。中央に置かれたコアには設備が収められ、それらを囲む厚い壁が耐震壁の役割を果たす。設計に用いられた1間1909mmのモデュールが空間全体に秩序を与えている。

竣工年
1964年(昭和39年)1月
所在地
京都市
構造・規模
鉄筋コンクリート造、地上2階
敷地面積
1911㎡(579坪)
延床面積
240.13㎡(71.60坪)
設計者
増田友也(担当:粂田勲)、作庭:中根金作
施工者
藤木工務店(京都)

増田友也(1914〜1981)
京都大学工学部建築学科で教鞭をとりながら、戦後のモダニズム建築家の一人として独自のスタイルの作品を数多く手がけた。作品の多くは鉄筋コンクリート造でコンクリートによる造形表現を追究したことで知られる。研究者としては、恩師・森田慶一の後を継承し、哲学的思考に基づく建築論を探求し続けた。

京都大学理学部の教授を務め、基礎物理学研究所の設立運営に携わった理論物理学者小林稔(1908-2001)の邸宅として建設された。現在は親族が居住し、維持・継承するための改修と修復に取り組んでいる。2019年、京都市による「京都を彩る建物や庭園」に選定された。